鉃鋼ビルディンググループとして初めて本格的な海外進出をめざしたハイズオンガーデン・プロジェクト。建築工事も竣工し、いよいよ本格的な運営を開始します。
今回は、ベトナムハイズオン市での「日本スタイルのサービスアパートメント」はどのようにしてスタートしたのか。オープンまでの準備作業についてインタビューしました(1回目、2回目、3回目、4回目、5回目の記事を読む。)。
大庭明生
株式会社鉃鋼ビルディング 海外事業部 担当部長
日本で在ハイズオン支配人募集
ハイズオン市内の土地権利者と交渉を開始し3年半を経て、2013年9月サービスアパートメント「ハイズオンガーデン」が竣工しました。10月31日のオープニングセレモニーには当時の在ベトナム日本大使にもお越し頂き式典は滞りなく行われました(セレモニーの記念品には「宮島のしゃもじ」を用意しました。)。
この式を遡る6か月前、私たちは東京で「ハイズオンガーデン」の支配人公募の最終面接を行いました。「日本的スタイル」にこだわるこの計画では現地の支配人は日本人と決めていました。当時ベトナムの一地方であるハイズオン市の現地スタッフを雇用し、長期間にわたって支配人として働いて頂く仕事にどれだけの応募があるのか心配していましたが、幸運にも、それぞれしっかりとした意志と経験を持った多くの方にご応募頂き、6名の最終面接を行った後、初代支配人を決定することができました。
膨大な規約・規定作成に取り組んだ日々
サービスアパートメントの運営については、この事業のフィージビリティスタディを行っているときから従業員構成や運営サービスについて検討を重ね、館内規則や宿泊約款、就業規則、労働契約書と現地の給与規程・賃金表などは既に策定を進めていました。
同時に運営サービスを具体化する細かなマニュアルも必要でしたが、このときは、わが社関連事業の呉阪急ホテルにお世話になって、主にハウスキーピングとランドリーについて基本的なマニュアルを作り、併せて必要な資機材についても打ち合せを行いました。
支配人の決定後は、細かな検討を繰り返し、必要な事項を付け足しながらフロント業務マニュアルのほか、事故や事件、パンデミック対策に至るまで、それぞれ十分に対応できる取り決めを行いました。
「お客様の安心と安全を守り快適性を作る」日本ならではのサービスを提供するためには、これで十分という限界はありません。真剣な作業の中で試行錯誤を重ねる毎日でした。
そして6月、いよいよ私たちのチームに支配人を加えて現地での作業に入ることになりました。
ハイズオンでの人材募集開始
現地では、運営準備業務に加えてスタッフの採用業務が始まりました。宿泊される日本の方々に当施設をより便利に利用して頂くには、日本語会話能力がありサービスアパートメントの実務をこなせるスタッフが必要でした。
ハイズオンでこの様な人材を十分に採用することは大変難しいことでしたが、様々な場所に声がけした結果、日本語を話せる優秀なフロントスタッフを採用できたのは幸いでした。経理やメカニック、ハウスキーピング、ランドリースタッフの場合は日本語会話力より専門能力を優先し採用しましたが、トレーニング期間中から現地日本語教師を招いた日本語教室を開催し日本語対応の向上も図りました。サブマネージャーは英語で実務ができる方を採用し、ベトナム語でのコミュニケーションを補助することとしました。
こうして20名の陣容ができ上がり、9月30日の竣工引き渡しをはさみ、グランドオープンに向かってトレーニングを続けました。
現地人気レストランの誘致に成功、新店舗の名前は広島に因んで「安芸」
一方で、私たちはこの計画で重要な和食レストランのリーシングに取り組んでいました。
かねてハノイで日本の方が経営する和食レストラン数件との交渉を始めていましたが、事情が分からないハイズオンでの出店に二の足を踏む店舗が多く、作業は難航していました。
そのような中で、ハノイの日本人居住区にあった「ハンちゃん」という和食レストランのベトナム人オーナーのティオさんが出店に興味を示してくださいました。
「ハンちゃん」は日本人にも人気があり、当時の在ハノイ駐在員の間では有名なお店でした。
オーナーのティオさんのご夫人がハイズオンの出身ということで、土地勘もあり、我々のリーシング条件で合意し、交渉は順調に進みました。
新店舗のネーミングについては我々に任せて頂き、わが社グループの創業の地である広島に因んで「安芸」と名付けました。
この「安芸」は、現在では日本人駐在員の方々だけではなく、地域の方々にも人気のある和食レストランとして賑わっています。
「ハイズオンガーデン」は当時では珍しい日本式サービスアパートメントでしたので、オープニングセレモニー以降も不動産・建設関係を始め、多方面から多くの方々が見学に来られました。オープンから約1か月、「広島経済同友会」の視察団が来訪されたときには、スタッフ関係者全員でお迎えしました。
大きな団体でしたので日本企業のベトナムに対する関心の高さを改めて感じながら、我々からは「エントランスに入ったら、ここは日本」というこの施設のコンセプトをプレゼンテーションさせていただきました。