鉃鋼ビルディングは、2023年9月、一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター(IBECs)による「CASBEE-不動産評価認証」(スコア:90.9/100点)および「CASBEE-スマートウェルネスオフィス評価認証」(スコア:84.7/100点)の2部門でともに最高位の評価Sランクを獲得しました。
今回は評価認証取得の意義と評価を受けたポイント(主に環境性能)について、プロジェクト担当者にインタビューしました(全3回のうちの1回目。2回目、3回目を読む。)。
吉田克司
株式会社鉃鋼ビルディング 管理営繕部 課長
CASBEEを取得する意義
現在の鉃鋼ビルディングは、2015年10月に竣工した建物です。建物の設計段階から環境負荷低減やビルを利用・入居する皆様の快適性に配慮して設計されています。その性能は竣工から約8年経過した2023年12月現在においても最新ビルと遜色ありません。
昨今の不動産、建設業界においては環境配慮やサステナビリティへの取り組みが強く求められています。そのような社会情勢のなか、環境や利用者に配慮された鉃鋼ビルディングとしての価値・性能を対外的に表す手段として、建築物の総合環境性能格付けである「CASBEE-不動産評価認証」(以下「CASBEE-RE」)と、室内の快適性や健康性等の格付けである「CASBEE-スマートウェルネスオフィス評価認証」(以下「CASBEE-SWO」)を取得しました。
格付けを取得したことで入居テナント様のCSR(企業の社会的責任)やSDGsへの取り組みへの貢献にもなり、鉃鋼ビルディングの付加価値向上につなげています。
CASBEEは「高い環境性能/少ない環境負荷」が評価される
CASBEEは「Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency(建築環境総合性能評価システム)」の略です。
その中で、さらに複数のカテゴリに分かれており、鉃鋼ビルディングが取得した「CASBEE-RE」は既存建築物を対象とした性能評価システムで、「CASBEE-SWO」は建物利用者の健康性や快適性の性能評価システムです。
評価は5段階に分類され、建物がその敷地を越えた外部へ与える環境負荷(L)と敷地内の屋外環境、建物の室内環境(Q)の点数によって格付けが決まります。
つまり、Sランクを取得した鉃鋼ビルディングは「建物の室内環境に優れ、外部環境への負荷も少ないビル」と評価されたことになります。
2021年からはSDGsチェックリストが追加された
CASBEE-REは2021年SDGs対応版として「建築環境SDGsチェックリスト」を整備しました。これにより、CASBEE-REの評価項目に加えて、SDGs達成へ向けた建物利用に際する工夫や各種取り組みを任意で評価することが可能となりました。
鉃鋼ビルディングはSDGsチェックリストで5点満点中4.4の評点を獲得しています。
エネルギー・資源に関する評価
まず、近年、社会的に関心が高まっている環境負荷に関係するところから説明をします。鉃鋼ビルディングでは照明、空調換気、給排水等の各設備において高効率設備を導入しています。
オフィスワーカーによってなじみのある設備としては、高効率LED照明や昼光利用制御センサーが挙げられます。空調でも、顕潜熱分離処理方式(温度帯の異なる2種類の冷水を活用した熱源の高効率化)を採用し、消費エネルギーの低減を実現しています。これらの設備によって環境負荷低減や利用者の快適性向上を図っています。
また、自社だけではなく、テナント企業の皆様にもCO2排出量に意識を向けていただくために、BEMS(Building Energy Management System)を利用した消費エネルギーの「見える化」を導入するなど先進的な取り組みを行っています。
さらに、2021年より導入した再生可能エネルギー由来電力の100%利用で、ビル全体で年間約7,000~8,000トンものCO2排出を抑制することに成功しています。
水の使用量を抑える中水プラントシステム
このほか、水の使用量を抑えるため、雨水や雑排水を中水として有効利用しています。
一般的にはトイレ等の排水用水は上水道の水を利用することが多いですが、鉃鋼ビルディングでは館内の雑排水と雨水を中水プラントに貯め、再利用できるように濾過、浄化した水を上水と下水の中間にあたる「中水」として利用しています。
これらをトイレの洗浄水などに再利用して水の使用量を抑えているわけです。また、冷却塔補給水などの設備用水についても、モニタリング実施のうえ、水質安全度を十分に確保しているという点で評価を受けました。
資源利用に関する評価
現在、飲食店などの商業テナントなどから出る生ごみについては100%飼料化し、ごみ排出の抑制に成功しています。
また、ビルを建てるときには、コンクリートや仕上材などに積極的に再生材を使用しました。ビルから出た廃材についても90%以上をリサイクルに回すことができており、この点も高い評価を得ました。
次回は、建物の安全性と建物の設計上の配慮などについて評価を受けたポイントを解説します。