鉃鋼ビルディングは、2023年9月、一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター(IBECs)による「CASBEE-不動産評価認証」(スコア:90.9/100点)および「CASBEE-スマートウェルネスオフィス評価認証」(スコア:84.7/100点)の2部門でともに最高位の評価Sランクを獲得しました。
今回はビルで働く人の健康性・快適性に関して評価を受けたポイントについて、プロジェクト担当者にインタビューしました(全3回のうちの3回目。1回目、2回目を読む。)。
吉田克司
株式会社鉃鋼ビルディング 管理営繕部 課長
オフィスは生産性向上や健康増進の側面についても評価される時代
オフィスは現在、企業や団体にとって「働く場」という意味だけではなく、経営を左右する投資の対象として考えられる時代になっています。また、ビル運営者がビルで働く方々の健康増進となる環境整備と知的生産性の向上のためのワークプレイス(空間と環境)を提供することも重要になります。
CASBEE-スマートウェルネスオフィス評価認証は、建物利用者の健康性、快適性の維持・増進を支援する建物の仕様、性能、取り組みを評価するシステムです。また、建物内で働く人たちの健康性、快適性に直接的に影響を与える要素だけでなく、知的生産性の向上に資する要因や、安全・安心に関する性能についても評価しています。
以上のようなことは、鉃鋼ビルディングの建築設計においても考慮・反映されており、賛同できる思想であったため、CASBEE-スマートウェルネスオフィス評価認証についても取得しました。
知的生産性の向上に関する評価
ビルで働く方にとっての働きやすさという項目も評価の対象となっています。
鉃鋼ビルディングでは、オフィスで働く人にとっての働きやすさを考慮し、さまざまなオフィスレイアウトにも柔軟に対応できるよう、グリッド式システム天井を導入しています。
これは3.6m四方のモジュールを組んで照明・空調などをユニット化して設置することにより、オフィスレイアウトの自由度を高めています。例えば、オフィス空間を区切る間仕切り壁の設置場所をきめ細かく設定し、用途の異なる様々な居室を設けることができます。
空調については、個人の快適性を重視して、エリアごとにきめ細かい風量や温度の設定ができるように可変風量方式(VAV)を採用しています。このほか、大量のOA機器導入にも対応ができるよう、コンセント容量は75VA/㎡のOA電源容量を確保しています。
健康・快適空間の提供に関する評価
鉃鋼ビルディング本館のオフィス区画は、アウトフレーム構法の採用により柱のない開放的なオフィス空間を確保しています。
天井高は2,950mmと通常のオフィスビルと比べて余裕のある高さとなっています。そして、窓も大開口で開放感を確保しつつ、Low-eペアガラスと太陽光自動追尾ブラインドで日中の日射熱(太陽光によって生じる熱)を適切に遮り、入居する皆様に快適に過ごしていただける環境を提供しています。
また、窓際に設置したエコレーターと呼ばれる重力式自然換気システムでは、通常、高層の建築物では費用面やメンテナンス性の懸念から敬遠されがちな自然換気を実現しています。これは、コロナ禍の換気対策にも有効で、入居テナント様に大変重宝されました。
利便性向上に関する評価
鉃鋼ビルディングでは、高齢者や車椅子利用者が支障なく館内を移動できるように、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(通称:バリアフリー法)」の建築物移動等円滑化誘導基準や、「東京都福祉のまちづくり条例」に則り、緩やかな勾配スロープと手すり、広い廊下を整備しています。また、廊下に障害物がないように、床置きサインを全廃し壁付けにする等の細かい部分にも配慮しています。
このほかに、本館オフィスフロアの中高層エレベーターには、先行予報システム機能があります。これは利用者がエレベーターホール手前のセキュリティゲートにICカードをかざすと、複数台あるエレベーターの中から、自分が乗車するエレベーターをモニターで案内するシステムです。このシステムを導入したことで、非接触でエレベーターを乗降できることに加え、運転効率が上がることで待ち時間の短縮につながり、エレベーター待ちのストレスも減らせました。
また、東京駅まで徒歩2分という立地と南館の羽田・成田両空港へのリムジンバスの発着場などの交通利便性の高さや、サービスアパートメント・商業施設・貸会議室などのビジネスサポート施設の充実度も評価されています。
プログラムに関する評価(ステイクホルダーとの連携面)
入居するテナントの皆様をはじめ、協力会社との連携は欠かせません。1階のエントランスホールで定期的に行われる無料クラシックコンサートや体験イベントは、ビルに入居するテナントの皆様への満足度とメンタルヘルスの向上も目的の一つとして実施してきましたが、この点も評価のポイントとなりました。
また、コロナ禍においては、共用部の定期的な消毒作業を行ったほか、新型コロナ対策ガイドラインを策定し、パンデミック時にも滞りなくビル運営、利用ができるように備えていることも評価を得ました。
今後の展望について
私たち株式会社鉃鋼ビルディングは、脱炭素社会、持続性のある社会の実現に向けてSDGsの17のうち11のゴールの実現を掲げています。
CASBEEにも求められるような社会的要請に応えるだけでなく、今後も選ばれるオフィスであり続けるために、建物利用者の快適性を追求した活動を続けていきます。