増岡裕隆(写真右)
株式会社鉃鋼ビルディング 取締役
磯野徹郎(写真左)
株式会社鉃鋼ビルディング 管理営繕部 部長
ビルを快適な環境に保つためには、電気や水を大量に消費する必要があります。
当ビルでは「水」、そして電力を最も消費する「空調」*を無駄なく使うことで、環境負荷の低減に努めています(全3回のうち2回目の記事。1回目、3回目の記事を読む。)。
*参考:経済産業省資源エネルギー庁「夏季の省エネ・節電メニュー」本州・四国・九州 事業者向け(2023年6月)
水を大切に使う
当ビルでは、水資源の有効活用のため中水道設備を導入しています。中水とは、飲用に適した水道水である上水と、ビルから排出される汚水である下水の中間に当たるもので、雨水やビル内の排水の一部を再生処理した再生水のことです。
ビル内の排水のうち、トイレの洗面台や店舗の厨房から排出されたものは地下の中水プラントに集められます。集められた水は、固形物の除去やバクテリアとオゾンによる浄化処理が行われて、再生されます。
このようにしてつくられた水のほかに、雨水や機械排水(冷却塔排水、空調により除湿した水)を集めてろ過した水を合わせたものが中水となります。
中水は、主にトイレの洗浄水となる雑用水として利用され、現在当ビルでは雑用水全量のうち、約65%を占めています。
3種の温度の水を使って空調を高効率化
ビルの空調設備は、一般的に冷房のための冷水と暖房のための温水の2種類を使います。
当ビルでは冷水をさらに温度帯別に分け、「低温冷水」と「高温冷水」を利用する空調システムを採用しています。
この2種類の冷水と温水を季節や使用目的によって使い分けることで、快適な環境を提供するとともに電力使用量の削減を行い、環境負荷低減を図っています。
空気をきめ細かく制御して省エネに配慮
当ビルでは大部分の事務室の空調にVAV 方式(Variable Air Volume System:可変風量方式)を採用し、室内の熱負荷(外部から出入りする熱、内部で発生する熱)に応じて自動で風量を調節することにより、エリアごとにきめ細かい温度設定が可能となり、快適性と省エネルギーの両立を図っています。
ビルでは法律に基づき、室内のCO₂(二酸化炭素)濃度を一定以下に保つ必要があるため、外気の取り入れ(換気)を行っています。換気に際しては、快適さを維持するために、あらかじめ外気を熱処理(冷やす、暖める)する必要があります。一方で必要以上に換気を行うとエネルギーを無駄に消費することになってしまいます。
そこで当ビルでは空調機にCO₂センサーを設置することにより、外気取り入れ量の適正制御を行い、エネルギー使用量の削減を図っています。
また、地下2階には200台以上を収容できる駐車場がありますが、ここでも車から排出されるCO(一酸化炭素)をセンサーによって感知し、排気・給気・循環ファンの運転を適正に管理することで消費電力の削減に取り組んでいます。
設備から発生する熱も無駄なく使う
当ビル地下の電気室には、外部から供給を受けた電力を、ビル内で使うことのできる電圧に変換する受変電設備が設置されています。
この設備から排出される熱(排熱)を有効利用するため、エコキュートと呼ばれるヒートポンプ給湯システムを導入しており、本来捨ててしまう空気の熱エネルギーをくみ上げて、効率よくお湯を沸かすことにより電力使用量の削減を図っています。
「水」も「空気」も身近な資源ですが、私たちは可能な限り節約や再利用を実践して、環境への負荷が少ないビルを目指しています。
次回は、持続可能な社会を目指したリサイクル活動についてお話します。