株式会社鉃鋼ビルディングは、鉃鋼ビルの「付加価値向上」の一環として、コミュニティイベント・プロジェクトに取り組んでいます。
2026年3月25日、鉃鋼エグゼクティブラウンジにて、第2回となるジャズコンサート「SAKATA AKIRA PRODUCES JAZZ AT TEKKO EXECUTIVE LOUNGE」を開催しました。
今回は、企画・運営に携わったプロジェクトメンバーへの取材をもとに、その背景と当日の様子をレポートします。

広島・呉で始まった縁が東京で音になる

開演前のエグゼグティブラウンジ
株式会社鉃鋼ビルディングの創業の地は、瀬戸内海に抱かれた広島県呉市です。
今回プロデュースを務めていただいたジャズ界の重鎮・坂田明さんも、同じ呉市のご出身です。
この共通のルーツが、第2回開催へとつながる大きなきっかけとなりました。坂田さんには、働く場所であるオフィスと文化をつなぐイベントの趣旨にご理解をいただき、今回も鉃鋼エグゼクティブラウンジを舞台に、特別な夜を演出していただきました。
前回の様子はこちら
ビル竣工10周年記念のイベントとして開催

鉃鋼ビルディングでは、ご入居企業の皆様に「働く場所に新しい価値」を届けることを目指し、コミュニティ活性化につながる企画を継続しています。
今回のジャズコンサートは、ビル竣工10周年を記念し、昨年11月に続いて開催したものです。
前回の経験を生かしながら、楽器と座席の配置、照明の明るさ、軽食とドリンクの提供場所まで細かく見直し、当日を迎えました。
今回の公演で特に印象的だったのは、単に演奏を披露するのではなく、この空間にふさわしい編成と空気をどう立ち上げるかが丁寧に考えられていたことです。
今回は会場の響きやラウンジ空間との相性を踏まえ、最終的にクラリネット、ピアノ、パーカッションによるトリオ編成が選ばれました。
当日の様子

出演は、現代ジャズ/即興音楽シーンで独自の存在感を放つ小森慶子トリオ(クラリネット/サックス:小森慶子、ピアノ:吉森信、パーカッション:小林武文)。以下の8曲が演奏されました。
1.ポールとピエール
2.バオバブ
3.Brilliant Corners
4.おくびょうのワルツ
5.The Lord is Listenin’ To Ya, Hallelujah!
6.Eat The Phonebook – coda
7.男はつらいよ
Encore:Blues for “S”
当初演奏を予定していたコンボからピアニストが急遽変更となり、広島県出身の吉森信さんがこの編成に加わることになりました。
予定どおりではない条件のなかで迎えた本番でしたが、そのことがかえって当日の演奏に独特の緊張感と、ライブならではの化学反応を生み出していたように思います。
今回、プロジェクトメンバーのあいだでも印象に残ったのは、小森さんのグループ名である「Ludus Tonalis」でした。これはラテン語で「音の遊び」「音の戯れ」を意味し、副題に「対位法、調性およびピアノ奏法の研究」とある言葉です。
そうした言葉の響きからも、遊び心と緻密さが同居するような演奏が聴けるのではないかと、当日を迎える前から期待が高まっていました。
遊び心と緻密さが交差した一夜

今回の公演でプロジェクトメンバーが特に面白いと感じたのは、三人の掛け合いでした。小林さんのパーカッションがリズムの輪郭をしなやかに支え、その上で小森さんの管が自在に動き、吉森さんのピアノが繊細さと大胆さの両方を感じさせるタッチで応答していく。
もともと期待していた「掛け合いの面白さ」が、実際のライブでは想像以上の立体感をもって現れ、会場の一体感を生み出していたように思います。
オープニングの「ポールとピエール」では、軽やかなフレーズの応酬のなかに、三人の息の合ったやり取りが感じられました。ひとつひとつの音が独立しながら重なり合い、どこか対位法を思わせるような構造の面白さが感じられる一方、演奏全体には伸びやかな楽しさも流れています。その両立が、この夜のトリオの魅力を最初の一曲から鮮やかに印象づけていました。
続く「バオバブ」では、深い低音とゆったりとした旋律が空間に大きなうねりを生み、ラウンジ全体に静かな集中が広がります。音が進むにつれて、空間そのものがゆっくりと呼吸しているような感覚が生まれ、来場者は自然とひとつひとつの響きに耳を傾けていました。

「Brilliant Corners」では空気が引き締まり、セロニアス・モンクの名曲ならではの複雑な構造から生まれる緊張と遊び心が交差します。鋭さと柔らかさが交互に現れる展開に、視線は自然と演奏者の皆さんへ引き寄せられました。結果として、吉森さんに変更となったこの編成だからこそ生まれた魅力が、はっきりと伝わってくる演奏になっていました。
一転して「おくびょうのワルツ」では、控えめでやさしい旋律がラウンジを包み込みます。音数を抑えた“間”の美しさが際立ち、聴き手の内側へそっと沈み込んでいくような、静かな余韻を残しました。

後半の「The Lord is Listenin’ To Ya, Hallelujah!」では、祈りのような響きとユーモアが同時に立ち上がり、三人の個性が鮮やかに交差しました。
「Eat The Phonebook – coda」では、先の読めない展開そのものを楽しむようなライブ感が強く現れます。トリオ編成ならではの余白があるからこそ、それぞれの音の動きが際立ち、音楽が生き生きとした表情で会場に広がっていきました。
本編最後の「男はつらいよ」では、思いがけない選曲の妙も相まって、どこか懐かしいメロディが会場の空気をふっと和らげました。馴染みのある旋律が現代的な感性で軽やかに編み直され、観客の表情が自然とほぐれていく様子が印象的でした。
今回のセットリストは、いわゆる親しみやすい定番曲を並べたものではなく、構造の面白さやアンサンブルの妙をじっくり味わう、凝った楽曲が多く含まれていました。
それにもかかわらず、会場では来場者の皆様が一音一音を追いかけるように耳を傾け、ときに悦に入るような面持ちで聴き入っていたのが印象的でした。そうした姿からは、ご入居企業で働く方々の音楽に対する感度の高さ、そして新しい表現に対して自然に心を開く豊かさが感じられました。
そしてアンコールの「Blues for “S”」が演奏され、静かな拍手が長く続くなか、この夜はゆっくりと幕を閉じました。
ジャズをもっと自然に楽しめる場として

今回のコンサートを通して改めて感じたのは、ジャズが必ずしも「静かに構えて鑑賞するもの」だけではないということです。
緻密な構造や高度な即興性を持ちながらも、その場には軽やかさや遊び心があり、音楽そのものをもっと自由に楽しめる空気がありました。テクニカルな面白さと、その場の楽しさが自然に同居していたことが、この夜の大きな魅力だったように思います。
エグゼクティブラウンジという日常に近い場所だからこそ、そうした感覚はより自然に立ち上がります。実際に当日は、軽食をつまみながら、お酒を飲みながら、それぞれのスタイルで音楽を楽しんでいただく姿が見られました。
演奏に耳を傾けるだけでなく、音楽をきっかけに場がほぐれ、人と人との会話が生まれていく。今回のジャズコンサートは、そんな“働く場所の新しい使い方”をあらためて示す機会にもなりました。今後も、かしこまって聴くだけではない、より開かれた音楽体験としてのジャズを育てていければと考えています。
多くの方にご来場いただきました

当日は、3月末のご多忙な時期にもかかわらず、多くの方にご参加いただきました。
前回のような大きな賑わいとはまた少し異なる、ほどよい距離感のなかで音楽を共有できる時間となり、ドリンク片手に談笑される姿や、演奏をきっかけに自然に会話が生まれる場面も多く見られました。
普段とは異なる環境のなかで、豊かな音楽体験を届けてくださった出演者の皆さんに、心より感謝申し上げます。
今後の予定
鉃鋼ビルディングでは、これからも働く場所に新しい価値を提供し続けてまいります。次回のジャズコンサートは2026年5月に開催予定です。音楽がオフィスに自然に入り込み、人と人のあいだに新しい余白を生む場として、今後も取り組みを重ねてまいります。
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