2024年4月1日、日本において障害者差別解消法が大きな転機を迎えました。この日から、事業者による障がいのある人への「合理的配慮の提供」が義務化され、これまで努力義務とされていた合理的配慮が、法的に義務付けられることとなり、社会全体での障がい者支援の取り組みが一層強化されることが期待されています。鉃鋼ビルディングにおけるこれまでの活動を担当者が解説します。
増岡裕隆
株式会社鉃鋼ビルディング 取締役
障害者差別解消法の背景と目的
障害者差別解消法は、2013年6月に制定され、障がいを理由とする差別の解消を目的としています。この法律は、行政機関や事業者に対し、障がいのある人への「不当な差別的取扱い」を禁止し、合理的配慮を求めています。合理的配慮とは、障がいのある人にとって社会的なバリアを取り除くために必要な対応をすることを指します。具体的には、物理的環境の改善、意思疎通の工夫、ルールや慣行の柔軟な変更などが含まれます。
(参考)政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/article/202402/entry-5611.html
すべての人にやさしい環境を目指して
当社では、これまでも建物のインクルーシブデザイン思想*に基づき、社内でワークショップを開き検討を行ってまいりました。また、障がいをお持ちの方に館内を巡回いただき、ビルが本当に働きやすい場所なのか、ビルの動線上に不自由に感じるところはないかなどの視点からご指摘を受けて、是正してまいりました。
今回の合理的配慮の提供の義務化についても、障がいのある人が社会で平等に生活できるようにするための重要なステップだと捉えるとともに、障がいのある方が不自由に感じることは、すべての人にとっても潜在的に不自由であるものであると考え、社内の運営を総点検し、新たな取り組みを行いました。
*インクルーシブデザイン思想
障がいの有無、年齢、文化に関係なく、すべての人が平等に利用できる製品やサービスを設計するアプローチ。ユーザーの多様なニーズを考慮し、誰もが使いやすいことを目指す思想のこと。
タブレット端末導入による受付システムの改善
ここは、オフィスビル内にある当社執務室への受付になります。以前は、電話機をカウンターに設置していました。この電話機を使用して、来訪者の方には内線番号をダイヤルしていただき呼び出しをするシステムでした。
カウンターは高さがあるため、車いすの方は電話機のボタンが見えにくくプッシュしづらいこと、また、手が不自由な方の場合には、受話器を持つことも難しいのではないかと改めて考えました。そこで、複数のシステムを調査し、デモ機を実際にある期間、借用して使用に関する評価を行いました。その中から、車椅子や弱視の方でも呼び出しやすい受付システムを導入することにしました。
このシステムはタブレット端末です。画面が正面を向いていることから、カウンターより低い位置からでも画面の表示内容をご確認いただけます。また、画面にタッチすることでご訪問いただいた部署の内線番号を呼び出し、スピーカー機能のため、通話時もそのままお話しいただくことができるようになりました。
このシステムの導入により、障がいの有無に関わらず、すべての方に対して、より利便性の高いものになったと考えています。
筆談ボードをビル内すべての受付に設置
こちらはオフィスエントランス1階の受付です。オフィスエントランスの受付は、オフィスビルのテナント企業様への来訪者の方をはじめ、外部の方にも多くご利用いただいています。
鉃鋼ビルディングでは館内で統一の対応方針を策定し、「筆談ボード」をオフィスエントランス受付をはじめとするすべての窓口に設置することとしました。
2024年11月には、館内にあるテナントサービスセンターをはじめ、ラウンジ&カンファレンスルーム、サービスアパートメント「オークウッドプレミア東京」のフロントにも筆談ボードの設置が完了しました。
ノーマライゼーションバッジの携行でコミュニケーションを円滑化
また、「お困りの方はお声がけください」と記載した「ノーマライゼーションバッジ」を制作しました。このバッジは、警備・清掃・ビル保守管理などに携わる協力会社の館内スタッフ全員の制服につけてもらっています。バッジをつけることで、お客様からお声がけいただきやすくなったことに加えて、スタッフ側からもお困りの様子のお客様にお声がけがしやすくなりました。館内全体の行動変容を起こすきっかけになったと感じています。
このほか、窓口となっている受付以外の場所でスタッフが作業をしている際にお声がけいただいても対応ができるように、スタッフ全員が携帯型ホワイトボードを常時携帯しています。
これまでお話をさせていただいたように、「誰もが輝きだす場所へ。」をコーポレートスローガンとする私たち鉃鋼ビルディングは、今回の合理的配慮の提供の義務化をひとつのきっかけとし、障がいを持つ人、持たない人、すべての方がより安心して館内をご利用いただく環境の構築に向けた更なる改善を行いました。
今後も一人ひとりが協力して具体的な対応を進めることで継続的に改善を図り、より良いサービス提供を目指していきます。
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