前回の「都心オフィス街の中で『自然植生の復活』」でふれたように、2015年のビル竣工以来、鉃鋼ビルディングは土地に由来する植生を重視するという緑化事業に取り組んできました。
そして、2025年3月、鉃鋼ビルディングは、東京都「江戸のみどり登録緑地」優良緑地として登録されました。
今回は、「江戸のみどり登録緑地」制度の概要と登録を目指した経緯について、プロジェクトのメンバーが説明します。
「江戸のみどり登録緑地」について
「江戸のみどり登録緑地」は、2017年に東京都が開始した制度です。この制度は、明治時代以降、急速に発展した東京で、開発により失われた自然を再生することを目的としています。
具体的には、東京にもともと分布している植物を植えていくことで地域の緑をつなぎ、生態系の回復を図る取り組みを支援しています。
東京都は、この取り組みに貢献する民間緑地を登録・公表し、自然環境や生きものの営みを取り戻す努力を後押ししています。
「江戸のみどり登録緑地」の対象となる緑地は、1,000㎡以上の敷地を有する民間建物等の敷地内の緑地であることが前提とされています。このほか、登録要件として、
(1) 樹木が植栽されている区域の面積が 100 ㎡以上であるもの
(2) 在来種の樹木の面積割合: 高木 40% 以上、中木及び低木 10% 以上
(3) 在来種の樹木の種数:高木4種以上、中木及び低木3種以上
があります。
この登録要件に加え、化学薬品を使った除草剤や殺虫剤の使用を低減したり昆虫や鳥類などのえさ場や隠れ場所を確保したりするなど、特に、生きものが生息するための環境に配慮した取り組みを行っている場所は「優良緑地」として認められます。今回、私たち鉃鋼ビルディングは、この「優良緑地」として登録されました。
「江戸のみどり登録緑地」を目指した理由
私たち鉃鋼ビルディングは、前回の「都心オフィス街の中で『自然植生の復活』」でお話ししたように、ビル西側の緑地帯を中心に、積極的に在来種の植物を植えてきた経緯がありました。
企業が保有する緑地に対して評価・認定をする環境認証制度は他にもありますが、東京都の「江戸のみどり登録緑地」の考え方が私たちの取り組みに一番近く、在来種の植栽をもっとも評価していると考え、登録を目指すことにしました。
江戸のみどり登録緑地申請に関する打ち合わせ時の様子
鉃鋼ビルが建っている土地は、もともと海に挟まれた陸地でしたが、江戸時代以降の埋め立てによって周囲の陸地化が進みました。それにつれて、かつて沿岸部で見られた植生から武蔵野台地の植生へと変化し、形成されてきたという歴史があります。
それを踏まえて、私たちは武蔵野台地の自然をイメージした在来種にこだわってきました。このような私たちの考えるコンセプトといちばん親和性の高いものが「江戸のみどり登録緑地」だったのです。
また、この制度に登録することで、地域の生態系保全に貢献する企業としての姿勢をより多くの人に知ってもらうことができます。さらに「江戸のみどり登録緑地」として登録された企業・団体との交流と情報の共有ができるというメリットにも魅力を感じました。
鉃鋼ビルディングの環境配慮への取り組み
将来にわたって自然環境と人間社会の調和を保ち、持続可能な社会を実現するためには、開発が生態系に与える影響を軽減することが、現代の企業にとって不可欠な課題です。特に不動産・建設業界では、気候変動や生物多様性への配慮が求められ、環境保護やサステナビリティへの取り組みが強く期待されています。
鉃鋼ビルディングでは、これまで、ビルで使用する電力量について再生可能エネルギー由来の電力100%導入や、人と環境に配慮した建物として「建築環境総合性能評価システム(CASBEE)」で最高評価のSランクを取得するなど、多くの取り組みを行ってきました。
今回の「江戸のみどり登録緑地」優良緑地の登録を通して、気候変動や生物多様性へ積極的に取り組む企業としてのメッセージを、ビルをご利用の皆さまをはじめ、多くの方々に届けたいと考えています。
次回は「江戸のみどり登録緑地」として登録された鉃鋼ビルディングの取り組みや、都心オフィスの限られた土地で植物を管理するうえで大切にしている点などについてお話します。
東京都「江戸のみどり登録緑地」ウェブサイト
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/green/green_biodiv/edo_regist
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