鉃鋼ビル以上の鉃鋼ビルへ
時と場をつなぐこみち・プロジェクト

より快適な環境づくりのため、ビル西側通路の緑地帯に再現された自然林と散策路の整備に取り組むプロジェクトです。

             

都心オフィス街の中で「自然植生の復活」

2015年に丸の内の地に新しく誕生した鉃鋼ビルディング(以下、鉃鋼ビル)の緑化事業は「自然植生の復活」をテーマにして、昔からこの一帯に生息していた木々を植えています。

このプロジェクトでは、鉃鋼ビルのより快適な環境づくりのため、ビル西側通路の緑地帯に再現された自然林と散策路の整備に取り組んでいます。

私たちは、新しい鉃鋼ビルの「人・街・時をつなぐ」という開発コンセプトに則り、この土地にある記憶を未来へつなげ、持続可能な環境づくりのため、このプロジェクトを「時と場をつなぐこみちプロジェクト」と命名しました。

今回は、プロジェクトを担当している増岡英一さんにお話を伺いました。


増岡英一
株式会社鉃鋼ビルディング 取締役


都市と自然との共生

2015年に誕生した鉃鋼ビルは、国内外の多くの人や企業が交差する場になること、丸の内と八重洲・大手町地域をつなぐ拠点になること、そして、戦後復興からの株式会社鉃鋼ビルディングの歴史と伝統を輝く未来へとつなぐ「人・街・時をつなぐ」開発のコンセプトとしています。 

大規模複合ビルとして生まれ変わった鉃鋼ビルでは社会のニーズに応えるため、各所に安全で利便性が高く環境に配慮された施設や空間が計画され実現しています。 

鉃鋼ビルの緑化事業では、その土地に根差した植生がその土地に与えるインパクトを軽減し、適した環境をつくり出せるのではないかと考え、限られた空間ではありますが、この地域の自然植生の再現を目指した植栽を行っています。 


江戸前島の自然植生考

鉃鋼ビルがある現在の場所は、江戸時代以前の入間川(隅田川)の西側と日比谷入江(現在の皇居の東側の丸の内から日比谷、新橋あたりまでにあった入江)の間にあった半島「江戸前島」に位置しています。 

徳川家康の江戸入府以降、江戸城築城工事に伴って出された大量の掘削土を用いて日比谷入江の北部を埋め立てたことを端緒として、この「江戸前島」の周囲は徐々に陸地に変わっていきました。 

この一帯の当時の植生も、陸地に変わるのに従って、ヨシやオギなどを中心とする関東地方にみられる沿岸の植生からイノデ-タブノキ群集を中心とする武蔵野の植生へと変わっていったと考えられています。 

鉃鋼ビルの緑化事業は、このような時代に注目して自然植生を検討することとし、常緑広葉樹落葉広葉樹の大木があり、かつての自然林に近い状態となっている「皇居の植生」と「国立科学博物館付属自然教育園から見た武蔵野の植生」を参考にして計画・実施されました。


自然植生で囲まれた鉃鋼ビル

このような考え方に基づく鉃鋼ビルの緑化事業の対象範囲は、ビルが接道している北側の永代通りの沿道、東側の外堀通りの沿道に加え、東京駅から最も近い南側エントランスと、敷地全体におよびます。

ビル北側にはクスノキを植樹

鉃鋼ビルの北側には常緑樹のクスノキ、ビル東側にあるオフィスエントランス前には同じく常緑樹のタブノキを植樹して、ビルに接道している2つの大きな道路に見合う、明るくしっかりとした存在感のある高木を選定しました。 

一方、鉃鋼ビルの南側広場は、サクラの木が植樹されています。ビル南側は、東京駅八重洲口から来られた方々には正面となる玄関口ですし、地下1階と南館2階のショップ・レストランがあるTEKKO avenue1階のリムジンバス発着場にも通じ、にぎわいを創出する場所でもあるため、シンボリックな植栽が必要でした。 

ビル南側広場にはヤマザクラの木をシンボルツリーとして植樹

ビル東側の外堀通りのサクラや八重洲さくら通りのサクラとの調和も求められたため、サクラの一種であるソメイヨシノを植樹すれば近接する桜並木との一体感も創出できますが、関東平野にはもともとサクラがなかったとされていて、私たちの目指す自然植生の再現と異なる結果になります。 

いくつかの案を検討した結果、江戸時代からこの一帯でも多く栽培されていた日本在来種のヤマザクラをメインに植樹することにしました。このようにして、周囲との一体性にぎわいの創出を図るように工夫をしています。 

また、このビル西側には、約170mにおよぶ緑地帯と通路があり、スダジイシラカシソヨゴなどの常緑高木からイロハモミジエゴノキヤマボウシなどの落葉小高木、ニニギアオキなどの低木、ヤブランツワブキなどの地被類からなる自然植生の林をつくり、緑を身近に感じられる散策路として整備しています。

ビル西側の散策路にて、時と場をつなぐこみち・プロジェクトメンバーと


小さな自然、江戸前島の空気を深呼吸―親しみのある散策路へと整備

このビル西側通路は、鉃鋼ビルの裏側というイメージが強く、東京駅と外堀通りの往来に通り抜けるために活用する姿だけが目立つ状況でした。しかしながら、よく観察しているとビル南側の広場から散策路にかけて、縁石に腰かけて休息を取られる方や、ビルのリムジンバス発着の時間を待っている方の姿が徐々に増えていることに気づきました。 

私たちは、このようにこの場所で時間を過ごすニーズがあることに着目し、散策路の中にベンチを7か所スツールを3か所に設置し、より便利に鉃鋼ビルを利用して頂くこととしました。ベンチの木材は東京多摩産のヒノキ、スツールに利用した石は江戸城の石垣にも使用されている神奈川県真鶴産の本小松石を採用し、自然林の雰囲気にあった地域原産の素材江戸時代にあったものを活用するように努めました。

東京多摩産ヒノキの無垢材のベンチ

「本小松石」でできたスツール

春秋の風の弱い日や夏の暑い日でも、この自然植生のある小さな通り道の中で少しの時間を快適に過ごしていただけることと思います。スツールやベンチに腰掛けて見上げると、メジロなどの野鳥の姿を見ることができるかもしれません。 

また、散策路内の縁石には、江戸時代以降に起こった、この土地の記憶や私たち株式会社鉃鋼ビルディングの会社の歴史を記したプレートが刻まれています。 

今回はこれらに加えて、緑地帯にある木々に紹介プレートをつけ、散策路を通る方にQRコードでそれぞれの詳しい情報を入手して頂けるようにしています。

樹木札のQRコード

当プロジェクトでは、今後も、ビル西側の緑地帯と散策路が、この土地の記憶を未来へつなぐ場所であり続け、そして、多くの方に愛着をもって利用して頂ける場所となるように、私達は、さらなる環境整備の取り組みを進めてまいります。

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