東京都心部である大丸有(大手町・丸の内・有楽町)エリアは、日本を代表するオフィス街であり、経済の中心地です。
そこに立ち並ぶ大規模複合ビルは、企業の活動拠点であるだけでなく、多くの人が行き交う公共空間でもあります。そのため、これらの施設の安全確保、特に防災対策は、地域全体の安全に直結する重要なテーマとなっています。
株式会社鉃鋼ビルディングは、前身のビル時代から、地域の消防団に社員を派遣しています。今回は、消防団の活動に参加する社員を取材しました。
消防団活動の背景
鉃鋼ビルディングでは、2003年から社員を地域の消防組織である丸の内消防団に派遣する取り組みを行ってきました。
丸の内消防団の活動地域となる大丸有エリアの大規模複合ビルは、多くの企業が入居し、日々多数の人々が働く場所であり、ショップやレストランなどの商業施設にもさまざまな目的をもった人たちが訪れる場所です。こうしたビルの安全管理は、私たち大規模複合ビルを管理する企業にとって重要な責務であり、単なる建物の維持管理にとどまらず、災害時の迅速な対応力が求められます。
社員が消防団活動に参加することは、ビルを利用されるお客様の安全を守るだけでなく、地域の防災リーダーとしての役割も期待されています。この取り組みは、企業の社会的責任(CSR)としてだけでなく、都市型災害への備えとして、必要であると考えています。
社員が消防団員として活動する意義
私たち消防団に加入している社員は、非常時には消防団員として活動します。消防団員は、「非常勤特別職の地方公務員」としての地位を持ち、自治体と連携しながら防災活動に携わります。その業務には、災害発生時の救助活動、避難誘導、地域防災訓練への参加などが含まれます。
このような消防団活動を通じて、火災・地震・台風などの緊急時に必要な知識と技術を習得し、実践を積むことによって、災害発生時の安全確保の強化に役立てています。
また、私たちが所属する丸の内消防団は、住民中心となる他の地域の消防団とは異なり、企業で働くビジネスパーソンが多く所属しています。さまざまな企業で働く消防団員と消防団活動を通じて関係を深め、協力をしあうことで災害時の円滑な避難誘導や救助活動に貢献することが期待されています。
鉃鋼ビルディングでは、私たちが生業(なりわい)としている、大規模複合ビルの管理業務と消防団活動を結びつけることで、企業と地域の防災意識が高まり、安全な都市環境の形成につながっていると考えています。
消防団活動の防災訓練
丸の内消防団では、定期的な防災訓練が行われます。私たちは自治体や消防署などと連携し、ビルの管理者として実務に直結する防災訓練に参加しています。
訓練は、火災発生時の初期消火訓練、避難誘導シミュレーション、災害時のコミュニケーション訓練などが含まれます。特に、大規模複合ビルでは防災計画の策定が欠かせないため、消防団活動を通じて、建物固有の課題を見極めながら訓練を行っています。
例えば、社員が消防団員として参加した訓練では、ビル内に多数の企業が入居していることを想定し、避難経路の確認や、業務時間内での安全誘導のシミュレーションを行います。この経験が日常の施設管理業務にも活かされ、災害時のスムーズな避難体制の構築につながっています。
地域貢献と広範な活動
消防団活動は地域の防災対策だけでなく、社会全体への貢献にも広がっています。毎年開催される東京マラソンでは、消防団員が安全管理の一環として警備・誘導を行い、数万人のランナーと観客の安全を守る役割を果たしています。このような活動は、防災の枠を超え、地域の安全に貢献する機会となっています。
こうした消防団での取り組みは、「人・街・時をつなぐ」という現在の鉃鋼ビル建設時からの開発コンセプトとも深く関わっています。日々の施設管理業務を通じて培った知識と経験を、地域全体の安全確保に活かすことで、企業と地域が協力しあいながら防災体制を強化し、持続可能な都市環境の形成に寄与しているのです。
大丸有エリアの安全は、企業と地域がともに築き上げるものだと思っています。社員の消防団活動を通じて、防災対策の実効性を高めながら、未来に向けてより安全な取り組みを推進することこそ、災害に強い「街づくり」の核心となると信じています。
今後も引き続き、鉃鋼ビルと地域のさらなる防災活動の発展に貢献する活動を続けていきます。
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